2018-01-06
犬、猫の寄生虫感染症で非常にやっかいだと思うのはジアルジア(ランブル鞭毛虫)感染症です。
この名前を耳にしたことがない人も多いのではないでしょうか。
この寄生虫を私たちは犬、猫の寄生虫として日々診療しておりますが、実は犬、猫だけではなく鳥類を含む小動物や私たち人間にも感染する寄生虫なのです。
それを初めて強く意識したのは平成に入ってすぐの頃のことです。
当時勢いを増し日本中に広まったアムウェイの商品のひとつで、アメリカ製の浄水器を強くすすめられ、自宅で使用する事となりました。
説明書を読むとその中によく知っている犬、猫の寄生虫の名前であるジアルジアの文字が目に入ってきました、ジアルジアも除去できる!と、 ”えっ!動物を飼育する方達のための記載?” 、と一瞬思ったのですが、すぐに人に対してであろうと思い直しました。
人獣共通感染症(当時まだ人畜共通感染症といわれていました)であることを思い出したのです。
でも、本当にアメリカで浄水器の説明書に記載されるほどメジャーな感染症であるのか不思議に思い色々と調べたことを思い出します。
実際に、アメリカでは年間100万人以上の感染者がいるという報告もあるのです。
日本では年間50〜150名ほどの感染者が報告されていますが、症状を示さない例や、軽い症状が時折繰り返される程度の人も多く、報告数を遙かに上回る感染者が存在すると考えています。
動物の感染状況はと言いますと、日本の犬の1.9%~14.6%が感染しているという報告がみられます。
またアメリカでは、下痢症状を示す犬の15.6%が、同様に猫の10.3%が、糞便中のジアルジア抗原検査陽性であったという報告がみられ、日米ともに多くの犬、猫が感染しているということが判明しています。
感染したヒトや動物はジアルジアを糞便中に何百万どころか何千万、何億の虫体をシストという形でばら撒きます。
ばら撒かれた虫体は通常の塩素消毒では簡単に死滅しません。
従って浄水場においてジアルジアが混入した場合には、十分に感染源となり得ます。
日本でも群馬県の水道水に感染可能なジアルジアが検出されたことが判明し、騒ぎになったことがあり、一歩間違えるとこの日本においても多数の感染者が出る可能性があるのだと知れ渡った出来事でした。
皆様は犬、猫の糞便の処理は適切に行っていることと思いますが、このような事実を知ることによって、いつも自分自身を守るよう気をつけていただきたいです。