2019-11-06
当院の獣医師で東京農工大学博士課程4年の松浦功泰が、上海で開催された6th Asian Meeting of Animal Medicine Specialties (AMAMS) にて、僧帽弁閉鎖不全症に対する根治手術と他1題の口頭発表を行いその成果を報告してくれました。
以下に松浦先生の報告文を掲載致します。
私は上海で開催された6th Asian Meeting of Animal Medicine Specialties (AMAMS) にて口頭発表を行いました。発表内容は犬の心臓手術についてと猫の心臓の新しい超音波指標についてでした。
犬の心臓手術は僧帽弁閉鎖不全症に対する根治手術の方法に関する報告です。我々の心臓外科チームは世界でもトップクラスの良好な成績であり、その手法は海外の獣医師から注目されています。我々は現状に満足せずより良い手術を行うために日々研鑽を心がけています。
また私は拡張能に関する新たな超音波指標である心室内圧較差 (IVPG) に着目しており、獣医師である我々は人と似た心筋症を起こす猫でIVPGを測定し、非侵襲的に心機能を評価するという研究を行っています。今回の発表内容は猫でIVPGを計測した世界で初めての研究であり、今後は病的な猫でその有用性を検証する予定です。
猫で心筋症に対するIVPGの有用性が示されれば、猫の拡張能評価が可能になるだけでなく、同じような病気が存在する人医学にも貢献することができます。この研究はデンマーク・コペンハーゲン大学との共同研究でもあり、この共同研究のきっかけとなったのは昨年のオランダでのヨーロッパ獣医内科学会 (ECVIM) に参加したことでした。今回の学会でも海外の研究者や企業と話す機会があり、今後の展開を楽しみにしているところです。
海外での学会発表の機会は発信するという場であるだけでなく、海外の獣医師との重要な交流の場でもあります。
また、海外留学を経験した先生の症例発表や海外の著名な研究者・臨床家の講演を聞くことは自分のこれまでの姿勢を見直す機会となりました。それらすべてを動物たちや飼い主さんたちに還元できるよう努力していきます。
松浦功泰
報告文にありますように、2019年2月から新体制により実施されています心臓外科は、それ以前と比べ術後の回復が早く、脱酸素(ICUから通常のケージへ移動)は麻酔から覚醒後間もなく可能で、さらに周術期にも膵炎等のトラブルの発生頻度が極めて低くなっております。
心不全に対する薬剤も現段階で全例が術後1カ月以内に離脱することが出来ており、成績は明らかに良くなっています。
尚、3ヶ月間は血栓予防のための内服薬投与は必要ですが、その後投薬は不要となります。
当院における犬の僧帽弁閉鎖不全症に対する手術は罹患犬のQOLを大きく改善し、良好に過ごす事が出来ています。
心臓病に苦しむ愛犬で悩んでおられる方は遠慮なく白石動物病院の松浦にご相談下さい。