2017-10-29
犬の膀胱がんと前立腺がんはいずれも多い疾患ではありませんが極めてまれな病気でもありません。
治療法はがん治療の3本柱である抗がん剤、手術、放射線という治療方法のなかで手術療法が主体となります。
手術方法に関し様々な獣医師が様々な考え方を持っております。
一般的にはがんのサイズや存在する位置、がん細胞の悪性度などで膀胱を部分切除するか全切除するかを、また前立腺がんであれば膀胱・前立腺・尿道の全切除を行うか前立腺のみを切除するか等を検討します。
また、部分切除や全切除を実施しても完治する率が決して高くないと考えステントを入れて尿の閉塞をできる限り避け、その後ステントを入れた部分にがんがはびこり排尿できなくなるまでの時間を提供するという方法も取り入れられています。
当院では転移病変や周辺組織への浸潤が明らかでない場合には積極的に膀胱・尿道(雌)、膀胱・前立腺・尿道(雄)の全切除術の実施も提案し、その他の方法を含め飼育者の希望する治療方法を選択していただいております。
全切除手術をすることで、より高い確率で寿命を全うできる可能性が出てきます。
その可能性というのは手術時のがんの状態に依存し手術時に顕微鏡的な転移がないことが必須になるのですが、これを手術決定時には知ることはできません。
このことはヒトの乳がん切除手術後5年間転移病変が姿を現すか否かを確認し、5年それがなければようやく完治とすることでも知れます。
膀胱・尿道、もしくは膀胱・前立腺・尿道の全切除手術を実施した場合、尿の貯留場所が無くなるために常にじわじわと出続けるという不都合が生じます。
現在2〜3年にわたり術後の経過を観察している子たちが複数いますが、飼育者が日々の尿の世話をしっかりしていただいているおかげもあり、健康に過ごしている姿を拝見させていただきスタッフ一同とてもうれしく思っています。