2018-04-14
最近立て続けに副腎腫瘍の摘出手術を実施し、その多くの病理学的検査所見が褐色細胞腫でした。
普段それほど頻繁に遭遇する疾患ではありませんが、たまたま複数例が重なったのに加えさらに1頭褐色細胞腫を疑っている犬の飼い主様が手術をするかしないか迷われている例もあり、ここで褐色細胞腫について紹介をさせていただきます。
褐色細胞腫とは
人の場合多くは副腎の髄質に出来る良性腫瘍ですが、一部(10%程度)は悪性の腫瘍です。
また副腎ではなく脊髄に沿って発生することもあります。
症状は高血圧、動悸、頭痛、発汗、顔面の紅潮などカテコールアミン(その中のアドレナリンは有名ですね)が多く出過ぎるための症状が現れます。
一方犬の場合、診断時には40%程度に転移病変が形成されているなど悪性を示すことの多い腫瘍です。
犬の症状は虚弱、食欲不振、体重減少などはっきりしないのが一般的です。
犬に頭痛が起こっているときに飼育者や私たち獣医師は、なんとなく体調が悪そうであるという事は感じ取れるでしょうが、頭痛が起こっているという事は知り得ません。
そのため犬には頭痛がないと信じられている位ですが、事実はどうであるのかがかわりません。
そして動悸があっても病院では怖さでそうなっていると判断してしまうかも知れませんし、犬の場合発汗は起こりません。
このように、症状から褐色細胞腫の存在を疑う事はなかなか困難なのです。
健康診断や何らかの異常で、超音波検査などの画像診断を行った際に偶発的に発見されるまで放置されていることの多い疾患なのです。
治療方法
外科手術による切除が第1選択の治療法です。
左の副腎腫瘍摘出に比べて右の副腎腫瘍摘出は難易度が高く術中のトラブルが起こる可能性も高くなりますが、決して摘出不可能ではなく当院でも多くの摘出手術を実施しており、転移の起こっていない場合には根治療法となります。
内科的に治療を行う場合、薬剤による高血圧の管理を行いますが根本的な治療とはなり得ません。