椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアの治療は、大きくは内科治療と外科治療に分けられ、内科治療では対応できない例に関しては外科治療を実施する必要があります。
日本小動物医療センター設立以前、当院では毎月5〜10例ほど周辺の動物病院から依頼を受け椎間板ヘルニアの手術を実施していました。
当院統括院長が日本小動物医療センターを設立し、白石動物病院に依頼を受けた椎間板ヘルニアの手術を全て日本小動物医療センターに依頼し直していただき、そちらで当院統括院長が手術を実施し、毎年100症例近くの手術をこなしていました。
現在では日本小動物医療センターにおける椎間板ヘルニアの手術は総合診療科獣医師に託し、再び白石動物病院における椎間板ヘルニアの手術を実施しております。
椎間板ヘルニアでお困りの際は数多くの椎間板ヘルニア症例を内科的に、また必要があれば外科的に治療を実施した実績がある当院にご相談ください。
ダックスの椎間板ヘルニア
ダックスは他犬種の10~12.6倍起こりやすいと言われており、さらにその症状も重い事が多いのが特徴です。
頚椎と胸腰椎では症状、治療方法も異なります。
頸椎椎間板ヘルニア
犬の椎間板疾患と言えば後肢の麻痺が起こる腰椎椎間板ヘルニアがまず浮かびます。
しかし頸椎の椎間板ヘルニアも以外と多く、犬の椎間板疾患の約15%程度を占めるとされており、私は当院及び日本小動物医療センターにおいて年間数十頭の手術を実施して参りました。
症状としては、硬直した歩き方(竹馬歩様)、頭を動かすのを嫌う、頭を低く構え首や肩に力が入りづらそうにしている等の痛みによる症状がほとんどで、麻痺や不全麻痺は、腰部に比べるとかなり少ないです(罹患動物の10%程度と言われています)。
治療としては、痛みをやわらげる内科療法と原因物質を除去する外科療法が有ります。
手術はやや難易度は高いものの、改善率は非常に高いので痛みに耐えてつらい生活を余儀なくされているような内科療法で良い反応が見られない子には価値あるものと考えています。
胸腰椎椎間板ヘルニア
ミニチュアダックスのブーム以来、私が担当する椎間板ヘルニアの手術数は増え続け、当院及び日本小動物医療センターにおいて年間100頭を超える数の手術を行って参りました。
その中にはグレードの高い症状が継続しているにもかかわらず手術になかなか踏み切れなかったり、すぐに手術すべき状況であることを知らずに時期を逸し、手術を受けても回復しなかった例がもあります。
ここでは椎間板ヘルニアについて詳しく知って頂く為ではなく、手遅れの状態にしてしまう事を少しでも減らす為の説明をさせて頂きます。
腰椎椎間板ヘルニアのグレード(胸椎の後方にも起こり、それも含む)
症状により5つのグレードに分け、治療方針をたてます。
グレード5では早急の外科処置を必要とします。
グレードの分類を簡単に示します。
- 腰が痛い
- 後ろ足のふらつきがある
- 起立できない、立たせてあげても歩行できない
- 排尿排便が自分の意思で出来ない。
グレード3ではおしっこがしたくなると前足で這ってトイレまで行き、用を足す事が出来ます。 - 足先の骨の痛みがわからない(深部痛覚消失といいます)
内科的治療で経過を観察するのはグレード1と2の段階です。
グレード3以降は外科処置を考えますが、発症直後は内科的処置後半日でチェックし改善傾向がわずかでも認められるなら、さらに半日経過観察します。
グレード3でも内科治療に反応せずある程度の期間がたった場合は外科処置を考慮します。
低グレードからグレード4もしくは5に悪化したり、グレード4もしくは5が内科療法に反応なく、とどまっているなら、なるべく早期に外科処置を考慮すべきと考えます。
特にグレード5なら、発症後36時間以内に外科処置を行い圧迫を開放してあげないといけないとされていますので、発症直後に受診したとしても、内科的に半日もしくは1日経過観察をするわけで、その間に改善が見られないなら、即座の手術が必要となります。
発症後受診まで時間がたっているなら内科治療の反応を見ている時間はないかも知れません。
グレード5であるか否か、つまり深部痛覚が消失しているか否かのチェックは非常に重要になります。
どのようにチェックすればよいか
犬の後ろ足の指の骨(どれでもよい)を、検査をする人の親指と人差し指の爪を立てて思いっきり圧迫(爪を立て骨をつねってもよい)した時に痛みを感じているか否かを確認してください(普段から咬み付く子であれば咬まれるかもしれませんので注意してください、神経質な子、痛みに過敏な子も注意してください)。
気をつけなければいけない点
深部痛覚が消失している(痛みを感じていない)にもかかわらず、消失していないと誤って判断してしまうような反応が見られることがあり、注意が必要です。
つまり足の骨を圧迫した際、足をすくめ振り向く動作が見られることがあります。
これは痛みを与えたときに、痛いことは脳に伝わっていないにもかかわらず脊髄反射で足をすくめ、その動きを不審に思い振り向いて確認しています。
この場合、深部痛覚があるのかないのかを前肢での反応と比較することで確認する必要があります。
その場合の確認は
前足の指を同様に爪を立て一気に強く圧迫してください(この場合も、普段から咬み付く子であれば咬まれるかもしれませんので注意してください、神経質な子、痛みに過敏な子も注意してください)。
その時に見せた反応(たいていはかなり強い反応が有るはずです)は、その子が人に痛い事をされた場合のものであり、痛みが後ろ足でも感じているなら前肢と同じ反応をするはずです。
前足の場合激しい反応があるのに、後ろ足では無いかあるいは『ん!なにかあったの?』程度の反応なら、グレード5と判断します。
そうなってから36時間以内に圧迫を開放する手術を必要とします。
外科処置について
MRI、CT、脊髄造影いずれかの検査により、脊髄神経が圧迫を受けている場所を確定し、手術によりその部位の圧迫を解除します。
当院では頸部、胸部、腰部いずれの部位の手術も可能です。
術後のリハビリ
手術後は状態に応じリハビリを行います。
当院には身体に無理な負荷がかかりにくい水中トレッドミルも備えていますので御相談下さい。